「海賊シチュー」

ニール・ゲイマン 文 / クリス・リドル 絵 / 大野舞・伊藤聖子 訳

(2021年1月25日発行)

(作品紹介) 

シリーズ第6作品目の「雪ダルマは生きている」でフランス語からの翻訳を助けていただいた大野博人夫妻とお会いした折に、近頃フランスの若い世代に人気のある作家とお聞きしたのが、今回の作品「海賊シチュー」でイラストを描いているクリス・リドルのOttolineオットリーネシリーズ(未邦訳)だった。

シュールな感じの線で描く精密画がデリケートに揺れる少女の感性を捉えるのだろか?絵本には珍しい少し漫画チックな画風だ。しばらくして、このリドルがイラストを手がけ、少年少女冒険文学の巨匠ニール・ゲイマンとのコンビで絵本をリリースするというニュースが入る。手に入れた原書は金文字タイトルの大判の絵本、リドルの絵の中には最高にぶっきらぼうで、はちゃめちゃな海賊たちが今にも踊り出しそうに描かれている。ストリーはちょっと風変わりな冒険ファンタジー……パパとママはディナーにおでかけ、お留守を言いつかった兄弟が、何と海賊ベビーシッターにジャックされるという展開、さてさて大丈夫なのかな?

好き嫌いはあるかもしれないが、画面いっぱいに海賊たちの活発さと意気軒高を描きまくったリドルの絵の迫力に惚れて、この作品を第11作目として取り上げることになってしまった。

 

これでいいのか?

それからもう一つ、現代の共働き家族では、まず夫婦の生活が優先せざるを得ず、子供たちは放課後、学童保育で時間を過ごす。もう都会には昔のように子供たちが野山を駆け巡って遊び回る場所はない。でも私たちはもう少し次世代のことを、つまり未来の大人たちのことを考える必要があるのではないだろうか?そんな疑念がふっとよぎり、タマネギ、ニンジン、ナッツにシード、ネギも、ライムも、それから金貨も、タラも・・・海賊たちが思いつたものはほとんど全部ぶち込んだ海賊風ごった煮スープを味わって見たくなったのだ。秩序も安定も大切だが、時には学校の成績なんて関係のない多様な世界に触れることも必要なのかもしれない。いつか訪れるかもしれないそんな人生の大冒険、そんな時、大海賊ノッポのジョンのスペシャルレシピは役に立つかもしれない。

 

みんなで作ってみよう海賊シチューを!