「雪ダルマ サンタクロースをさがして」

ティエリー・デデュー 絵・文 大野博人 訳
(2021年1月25日発行)

(作品紹介)

この作品は、フランスの人気絵本作家ティエリー・デデューの「雪ダルマは生きている」(フランスでの発売は2016年)の前年に発売されたクリスマス三部作の最初の作品です。こどもたちが初めての積雪に興奮して作った庭の雪ダルマが、子どもたちの夢と想像力に感応し、まるで生命が吹き込まれたように動き出し、遠く極北の地ラップランドまでサンタクロースを道をたずねながら進む旅の試練を綴った少し古風な設定の物語です。

 

「お返しに何をくれるのかな」 「なんにもないよ」

クリスマスプレゼントを、サンタクロースにも届けようとした小さな雪ダルマが遭遇する旅は試練の連続でした。こどもたちがこれから成長する過程で出会うことになる社会のルールや習わしを暗示しているかのようです。でも、無邪気な雪ダルマは贈り物どころか、自分の帽子やマフラー、雪ダルマのシンボルでもある鼻のニンジンまでも取り上げられてしまうのです。

ニンジンの代わりに松ぼっくりの鼻をつけ、ボタンの目だけになってしまった小さな雪ダルマが、それでも空を見上げて微笑むラストシーンは最高です。やさしく、ほがらかに歌うことと、無心な笑顔は、どんなに窮地に陥っても奪われることのない勇気の源泉です。新たな出会いと共に成長していくこどもたちの姿を重ねたい情感に溢れる物語です。

3部作の第2作の「雪ダルマは生きている」では、雪ダルマは森のなかまたちとの出会いを通じ、時を超えて、広い世界をめぐる旅をする物語。春になれは融けて消えてしまう雪ダルマですが、水となって川をくだり、海に注がれます。そして水は蒸発して雲になり、風にのって世界をめぐります。やがて季節がめぐれば、初雪になって森に帰ってきます。雪で作られた雪ダルマは水となって世界中をめぐっているようです。