「空を飛びたくなったら」

ジュリー・フォリア―ノ 絵 クリスチャン・ロビンソン 文  田中一明 訳
(2020年4月25日発行)

 

(作品紹介)

一粒の種から始まった庭づくりの物語、土の中のもぐらの冒険と続いた「自然と生命」シリーズの第3作目の主題は、一転して人間の子どもたちです。好奇心いっぱいで、いまにも空に向かって飛び出していこうとする子どもたちを、黙って支え、しっかり後押しする若いパパやママたちを祝福している作品です。子守唄を歌うように語り聞かせる親子の対話の微笑ましいリズムを発見していただけたら幸いです。ストリーがあるわけではありません、ただシンプルな日常の親子の情景を描いているだけです。ただどのページにも、ここが子どもたちのこころにタッチするポイントはここだよ、子育てはこんな感じで…と。ですから、この絵本の本当の対象は、3〜5歳児でなくて、20代30代の若いパパさんママさんのための子育てガイドブックなのかもしれません。



ねぇ あそぼう!

子どもたちの夢見る力と空想力を育む、成長を見守り、影に日向に世話する、それはみな私たちが育む生命のワンシーン。好奇心でいっぱいの子どもたちの眼に映るたくさんのモノを、子守唄ように描いていきます。親子が一日を振り返りながら……父さんバッファローが息子バッファローに「いない いない ばぁー」をする場面、眠りにつく娘に母さんが語りかける場面、今日子どもたちと過ごした一日の記憶をたどり、子育てに懸命な若いお父さんやお母さんを激励するための絵本です。子どもたちが、安心して眠るために必要としているものは、それは無条件の愛と信頼。それが一番大切な生命の条件です。

ジュリー・フォリア―ノ(絵)と、クリスチャン・ロビンソン(文)は数々の大賞を受賞している人気の絵本作家コンビです。子供たちや社会の抱えている内側の複雑な課題を背後に滲ませながら、作者はとてもシンプルな形で静かにメッセージを発信しています。最新作にはBlack Lives Matter (黒人の生命が大事!) のデモを連想させるYou Matter (きみたちが大事!) というん人間の生き方を見つめる深い内容の作品も発表されています。政治的な立場をとることなしに、幼いものたち、弱いものたちの安心立命を願う、本当のフェアーネス(人としての公平さ)を論じ合えるような絵本作品も手がけていきたいと思っています。生命は育み育まれるもの、そして世の中は、長い時間をかけ、世代を超えて受け継いでいくものなのですから……