「自然と生命」シリーズ
2020年8月21日発行
シンシア・ライアント 文
ブレンダン・ウェンツェル 絵
田中一明 訳
シリーズ第5作の原題はLIFE、「自然と生命」というこの第1シリーズのテーマそのもの表題です。生きものたちの「生きる」ということの姿と形を、野生の生きものたちになぞらえて描いています。
生命をめぐる自然の大スペクトルが、草むらにも、森にも、空にも、そして海にも、生命のことを知りぬいている生きものたちが生きています。
眼差しを信じよう…
キーワードはふたつloveラブとtrust(トラスト)です。わたしたち人間は、loveラブを「好き」とか、「愛している」とか、何か心地よく、あるいは何か高貴な感情や尊敬の念を表わすものとして使っています。しかし、もしコトバを話せるとしたら…動物たちは何というでしょう? それは、生きていくことそれ自体と、生きていくためになくてはならないものなのではないのでしょうか? trust (信頼する) は、単に信じましょうという意味を超えて、それぞれの野生を生きるすべを知っている生きものたち自身に、その生命の道筋をゆだねていくべきだという意味にも、解釈を広げることができるでしょう。これは、地球という生態系に生きるすべての生きものたちに共通する物語なのです。
読みの中で発見したふたつのキーワードとは別に、この作品の魅力を際立たせている点があります。それは、すべてのページに登場する動物たちの目です。パンデミック以後、人と人とが距離を取らなければならない時代になっていくのかもしれません。ITの進化で、オンラインでつながりさえすれば、いつでもどこでもその距離の隔たりを一気に解消できますが、プロンプターを使って話されたコトバや画面の中では、目と目を見合わせてできる話とは違います。この本の中の動物たちの眼差しの先には何があるのでしょうか?自然の厳しい試練を生きものたちは、みな乗り越えていかねばなりません。また自然への讃歌は生態系や野生動物保護の問題にまで関連付けられるので、子どもたちへのメッセージとしては少々ハードルが高く、高尚に過ぎるのではと思われる部分もある作品です。ですから、敢えてコトバや内容を子ども向きに易しくすることは、しませんでした。まだ理解が及ばない言語というジャングルも、子どもたちがこれから探険すべき未知の世界の一部なのですから……。しかし、それでも世界は全体としてつながりあい、互いに関連しているのです。わたしたちは一つの生命体として共に生きている。それがこの本の主題です。そして、それはアーシングの基本理念にもつながっています。
この本の絵の中の動物たちが見ている先は、朝の光にかがやく私たちみんなの自然と生命なのです。
絵本ストア
語りと絵で紡がれた音楽絵本。言葉では近づけないそのエッセンスを。チェロ弾きのハンク─ステッド夫妻が贈る、ことばにならない調べ