「自然と生命」シリーズ
ダン・ヤッカリーノ 絵・文
青山南となかまたち 訳
(202年3月25日発行)
ヤッカリーノの作品は、シンプルですが、とてもエネルギシュなメッセージにあふれています。子どもたちのやわらかなこころに届くメッセージが、まるでアンパンの餡のようにぎっしりと詰まっています。そして、餡の中味はもちろん「勇気」です。
シリーズの第2作の主人公は、地中深く生息するもぐら、8人兄弟の末子モリスくん。おちびちゃんだけど、大きなお兄さんたちに負けていません。ガッツとユーモアいっぱいの楽しい冒険談。TVアニメーション作家でもあるヤッカリーノが、子どもたちには見ることのできない地中の世界を想像力で描きます。キーワードはdig「掘る」。お兄さんたちは、食べ物を探すために土の中を深く縦横無尽に掘りまくります。でも、モリスは逆転の発想で、上に向かって掘ったのです。決断の一瞬、これがこの作品のハイライトです。そしてラストで、「えらいぞ、モリス」「小さいけれどでっかいことができるんだ」と。よろこぶモリスの笑顔に、ちびっ子たちは、どんなにかよろこびを点火させることでしょう。
ミミズやモグラが 土をつくっている
大人は、頭の中の知識 で、世界を描き出すことができますが、日々成長する子どもたちは、自分の世界を懸命に限られた五感で捉え、いつもイマジネーションをいっぱいに膨らませて未知の世界を捉えようとしています。そんな子どもたちの想像力に働きかけて、土の中にも生きているものたちがいることを知らせること、そしてその土はすべての生命を育む基盤になっていることを知ることはもう一つの大切な情報です。モグラは土中のミミズを食べています。250年も昔に、進化論で有名なダウィーンは、生涯をかけてミミズを研究し、地球上の表土の土のほぼ100%が、ミミズが土といっしょに食べて消化した腐葉土でできていると結論づけています。土はミミズの糞の堆積だったのです。土の中のミミズや虫、そしてそれらと共生しているバクテリアや菌類といった微生物がすべての生命の根源でもあったのです。地球上の表土の堆積は百年あまりの歳月をかけて、ミミズが枯れ葉などの有機物と一緒に消化されることで肥沃な土壌が維持されているのです。
この土のことを、そしてそこに生きる生きもののことをものがたりの素材として取り上げた絵本に出会ったことが、土壌再生と有機農法を研究するカクイチ研究所にとって、因縁のように感じ、迷うことなくこれまた2冊目の絵本として制作することを決めました。
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